下町ビュー

国内サッカー(主にグランパス)、社会福祉と街歩き、人について書いています。

王者を決める舞台


2019.10.26

ルヴァン杯決勝@埼玉スタジアム

コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレ

 

ラグビーW杯の熱狂冷めやらぬ日本。

ホスト国、日本はつい先日敗退したものの、ラグビー熱は未だ熱気を帯びている。

 

この10月は台風によって日本各地が被災。

ラグビーW杯の結果にも影響を及ぼし、何よりも関東地方、東京や千葉といった比較的これまで災害に見舞われることのなかった地域が被災。

 

それはこの日、埼玉県で開催されるルヴァン杯決勝にも影響を及ぼしたと思われる。

関東地方は25日前後にまたも大雨によって交通網を中心としたインフラが絶たれた。それによって決勝の舞台にたどり着いたコンサドーレのサポーターの交通手段にも少なからず影響を与えたのではなかろうか。

 

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札幌の選手紹介 ゴール裏

しかしながら、コンサドーレのサポータの熱量はこれほどのものか!と驚くほどの質だった。チャントやハンドクラップ、各種のコールもバリエーション豊かで、他サポである私も聞いていて楽しかった。

 

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川崎選手紹介

私がこの試合を現地で観ようと思った主たる理由は川崎フロンターレである。

今シーズン現地で3試合、川崎目線で観戦。やはり観ていて楽しいサッカーが川崎にはある。サッカーだけでなく、サポーターによるチャント、コール、ハンドクラップに魅了されていたので、川崎贔屓に試合観戦に臨んだ。

 

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川崎のコレオ ルヴァン名物

私は試合の途中まで忘れていた。

もはやコンサドーレは昔の、エレベータークラブBIG3(京都・福岡・札幌)ではなくなっていたことを。広島、浦和で「ミシャ式」ともいわれるオフェンシブサッカーを完全に身にまとったコンサドーレは決勝にコマを進めたことは運だけではないことを痛烈に、体感的に伝えてくれた。

 

ジェイという圧倒的制空権を握れるFWをセンターにスピードのある鈴木武蔵、テクニックとアジリティのあるチャナティップを前線に、かつて他のミシャが率いたチームを思い出させるような「湧いて出てくる」菅や白井。

 

どちらも「提案型」とか言われて、守備よりも攻撃にクオリティを置くチーム。チーム戦術に若干優位に思える札幌と個の技術の集合体である川崎は最高のサッカーを見せてくれました。

 

ちなみに、私は妻を初めてサッカー観戦に同行してもらいました。

まさにラグビーティーピーポーの最中にいる妻が途中で飽きないか、「ラグビーの方が~」とか口にしないか冷や冷や。

 

結果、最後の最後まで試合に釘付けにさせてくれた両チームに感謝しかありません。

両チームとも攻撃的でした。シュートが度々見られ、且つ、宇宙開発的なものではなく、メインスタンドにいながら「おお!」と思わせるものが多かった。

札幌は後半からFWアンデルソン・ロペス、ルーカス・フェルナンデスという寄り攻撃的な選手を投入。鈴木武蔵との三人で攻めるスタイル。とにかく前進し、それを追い越す動きが絶えない展開は誰が見ても面白い。

 

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後半開始くらい

片や川崎。素人の妻でも「顔は観たことがある」というキング中村憲剛を投入。

後半開始やや過ぎから家長が左インの位置で輝きだすとそこから最後まで「あいつに持たせたらやられる」感がビンビン。

試合開始から「めちゃくちゃ上手い」と口から出てしまう大島僚太からのパスに今日は決定率すんごい小林が美しい、文句のつけようのないゴールが生まれる。

 

試合85分、私たちが座っていたメイン上段の席から次々と席を立つ方がいました。

小林のゴールで川崎の勝利は決した、と思う人は多かったはず。上記、札幌の攻めが3人の独力にしか可能性を感じなくなってもいた。

そして帰りの飛行機とか、そういう仕方のない理由で帰った方もいただろう。

 

87分あたりから川崎ゴール裏は勝利を確信したか、「明日も」を熱唱。勝ちムード。

 

途中から完全に札幌を応援し出した妻も「あ~やだ~」と嘆くものの、どう考えてもATラスト1プレー。GKも上がるシーンで札幌はCKから深井のヘッド!!

 

起死回生です。リーグ戦と違ってこれで本当にこの試合がわからなくなった。

この時点で返りの飛行機を諦めた、いや、望んで捨てた札幌サポーターもいたでしょう。いや、私がその立場ならそうする。

 

それくらい、「最悪、勝ち点1を持って帰れます」じゃない、「優勝」に手が届いた瞬間だった。

現場の空気は何となく真っ赤。札幌の士気が爆上がり、「追いついた側の方が勢いありますからねえ!」とか、中継解説が誰だか知らんかったけど鈴木解説員も自信もって言えそうな空気。

 

メインから見て左側の札幌コーナーの士気の上げ感と右側の川崎コーナーの消沈感は目で見えました。

 

延長戦。これで嫌でも拘束時間は30分延長。

妻の集中は欠けてない。

谷口が退場!!あれ、何かデジャブ。

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疑惑のシーン映像が求められます

VARって、あれどう見てもペナ外だろと思った。スクリーンに「VAR」としか出ないもんだから、何を審議してるのかわからないよね!

結果FK。

 

札幌には福森がいます。

今にして思えば川崎にいそうな選手。何で札幌?と思えば嘗て川崎にいたんですよ、という大分のGK高木と同じカテゴリーの選手。

 

正直、近すぎると思った。

得意げに「チャンスだけど近いな~、この距離だと壁を越して落とせるかな~」とか言ってみたら左足からファー上に!!

 

あのボールの軌道は目に焼き付いて離れない。

フッキがヴェルディに居た時、国立で35m~くらいのロングシュート決めた時の弾道を更新するような。

 

川崎は10人となり、大島?に変えて運動量のあるマギーニョ投入。彼一人で1.5人分の活動量は得られたと思う。しかし、流れの中から得点が生まれる気配は札幌の5人以上で敷く守備ブロックを崩せる雰囲気はなかった。

 

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中村憲剛からのCKは何か生まれる

ここでL・ダミアンという個を投入できなかった所が深い。

 

しかし、小林が決定機を確実にものにする。

 

一瞬オフサイド?と思いきや余裕でラインに札幌DF残ってたし。

 

メインスタンド札幌寄りながら、周りの誰もがよく叫ぶ、変なブーイングのない幸せな空間も決着をつけるステージ、今やなかなかお目にかかれないPK戦へ。

 

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両陣営

正直、札幌のGKクスンユンに雰囲気があったので札幌有意と思いました。

しかし川崎もあのまま続けていてもセットプレーからしか勝ち目もないとも思えた。そんな状況でのPK。

車屋が外すも、その後に川崎GK新井がナイスキーパー!

イーブン。

フロンターレは6人目が確実に決める。

 

コンサドーレ6人目は金髪。

外すと思いました。進藤だとは遠目でわからなかったものの、キックまでの時間の要し方、何か躊躇いがち、そしてステップに入りフェイントを入れるも新井が動じずに万事休す。正面に力ないシュートが放たれ、新井が胸でキャッチ。

 

川崎がルヴァンカップ初優勝を飾りました。

またしてもタイトルが取れなかったミシャ。しかし限りなく近づいたのはこの日が来日以降最高ではないか。

 

試合後もクスンユンに声をかけに行く川崎のチョン・ソンリョンの姿、不動のGKと思われていたソンリョンからポジションを奪った苦労人新井がヒーローになるという予備知識がないと感傷に浸れない部分もあり。ピッチ上が美しい。

 

谷口が結果一発退場、という部分はあったにせよ、何か清々しい試合内容。というか、これ以上の展開はあり得ない。

 

ラグビーに湧く日本で、私のような名古屋グランパスサポは「ルヴァンは若手を試す場」としか初めから考えず、リーグ戦が第一。としか考えていなかった日常に、日々の生活の一場面に素晴らしいコンテンツ、サッカーがある、と痛烈に思い知らせてくれました。

 

コンサドーレ、見事。

一昨年残留し、功労者であった四方田氏(現コーチ)の監督職を解き、ミシャ・ペトロビッチを招聘したクラブは素晴らしい。選手を観ればユースから昇格した選手も多く、良きスカウトから良質な外国人選手を獲得。ミシャを担保に、というのは失礼だが、彼があって加入した選手もいるでしょう。

ミシャ、という監督の哲学や方向性をコンサドーレ札幌というクラブは納めて成長できる器を四方田氏が築いたと判断できた野々村社長も見事。

 

重なる悪天候のなか、遠く離れた北海道から駆け付けたサポーターの皆さん。素晴らしいコレオグラフィー、応援でした。

 

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素晴らしきJリーグ

攻撃って素晴らしい。シュート打つって見てて楽しい。

サッカーの一つ一つの魅力が詰まった、2019年のルヴァンカップ決勝でした。